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「俺はな、中根と石井を村に招き入れた男だ。」
「おっちゃん、マジか!?」
「黙って聞け、アキ。」
村田は12年前、近くの村役場から軽トラで物資を運ぶ仕事をしていた。
トラックには、黄猿の石を乗せて走る。
村で唯一、村の外を知る村田は、村で外のことを話すことを禁じられていた。
そんなある日、村田は荷物を積んだ帰り道で二人の男に止められた。
二人の男は、家族を失った者の気持ちを理解できないのかと俺に迫った。
妻を亡くし、一人で由衣を育てていた俺にはその言葉は刺さった。
2人をトラックに乗せ、黄色い真似猿岩の前で下ろした。
すぐに村に入られては、村田が招き入れたと気づかれてしまうので、村の近くで1週間程忍ばせた。
2人には、村にある九宮里神社には、帰るために必要な黄猿の石と、村の秘密を書いた書物があることを教えた。
深夜に二人は村に忍び込み、その2つを盗み出そうとしたが、村民に気づかれた。
2人は逃げたが、そのうち一人が翌日、真似猿岩付近で死んでいた。
もう一人は遺体が見つからなかったから逃げきれたはずだ。
その後、村は外部に対する警戒が強くなった。
それまで行われていた物資調達も、それ以降は二軽村から真似猿岩まで外部に運ばせる。
翌日、村田が石を持たずに真似猿岩まで取りに行くとう流れに変わった。
村田は何度も酒を口に運びながら、話してくれた。
「おっちゃん、なんで二人を招き入れたんだ?」
「アキ、お前にはわかるだろう、この村の仕来りはおかしい。俺は、物資調達で村の外を見ているからわかる。こんな村、おかしい。」
この日から、3人で作戦を練る日が続いた。
村田と佐々木は、九宮里村のことをテレビで放送されることで、村が開放へ向かってほしいと思って協力してくれたのだ。
最初は、佐々木が村の若者たちへ、次藤から聞いた村の外の情報を伝える。
都会の街並み、様々な食べ物、スマホなどの便利な機器。
閉ざされた村で育った若者達にとって、都会の話は心をわしづかみにするものだった。
村の若者たちを中心に、次藤やテレビ局に協力しようという流れが起こる。
それに反対する中高年に対し、今度は村田が打って出る。
若者の意見に耳を貸す柔軟な中年を中心に味方につけ、徐々に流れを強くしていく。
日に日に、テレビ局へ協力しようという意見が強まり、村の長老でも抑えきれなくなる。
もし、テレビによって九宮里村のことが世間に広まった場合、村として好都合のこともある。
1つは、外界を遮断したこの村では血が濃くなってしまったこと。
その為、子供が減少傾向にあり、村の人口も徐々に減っている。
外部から入ってくる人の量を調整すれば、村の人口減少を防げる望みが生まれる。
そして、 鬼くくり に参加する外部の人間が見込める とうことだ。
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