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戦いを開始して間もなく、次藤や芸能人たちは信じられない光景を目の当たりにすることとなる。
数十秒の沈黙を破ったのは、意外にも人狼王 鈴木だった。
「こういう時は、まず占い師が立候補すべきじゃないかな。」
一斉に鈴木が注目される。
鈴木は、今までの気弱で小心者のイメージとは別人のような、強い目をしていた。
「占い師じゃない、狐だ。」
鈴木に対し、すかさず和夫が言葉を返す。
その和夫も、今までのぶっきら棒な様子ではない。まるで、木々に隠れる獣を見つける狩人のような鋭い眼光だ。
「お父さん、どっちでもいいでしょ、分かるんだから。」
場を収めるように優しく言う由衣。しかし、その由衣の目もまた、草の中に身を低く構え、獲物を静かに待つ狐狸の目をしている。
3人の迫力に驚く次藤や芸能人達。
その中で、芸能界の心理ゲーム帝王 田畑 の胸に、は静かに火が灯ったことを、次藤も気づいてはいなかった。
「良くない。遊びと一緒にされてたまるか。」
和夫の様子を見て、次藤は鈴木に注意する。
鬼くくりとして、尊重する意識を持つようにと。
鈴木は、注意をした次藤に目を合わせる。そして、再び言葉を続ける。
「狐の人、立候補すれば騎士…じゃなくて黄猿の石で守ってもらえる。狐が立候補してくれなきゃ何もヒントが無いまま進めなきゃいけない。何もわからないと、戦力にならない無口な人から追放することになる。」
鈴木の言葉に、明らかに嫌悪感を露わにした和夫が続いた。
「ふん、鬼くくりをなんかのゲームと一緒と考え仕切ろうとするやつなんて、真っ先にくくられる。」
和夫は、地響きのように低く静かで、そして強い声を鈴木に向ける。
しかし鈴木も怖気る様子はない。むしろ、和夫が攻撃的になるのは好都合とすら考えているのかもしれない。
「それは、九宮里村の外と内の戦いということでしょうか? だったら不利なのはそちらですよ。5対3で争いますか?」
「5パーセント。」
冷たく静まった場に、不意に田畑が言った。
「九宮里村の3人の内、2人が鬼の確率は5パーセント。鈴木さん、その5パーセントにかける気ですか?」
田畑の言葉に、鈴木も和夫も黙ってしまった。
鈴木と和夫のぶつかり合い。それを諫める由衣と田畑。
それを無言で見ている者が4人いた。
岸谷と川田、源田、そして昭だ。
場の緊張感に怯えているのか、それともあえて何も言えないのか。3人は言葉を発しなかった。
その沈黙を切り裂いて、次藤が質問した。
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