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しばらくしてからショッピングモールを出ると、まだ雪が降っていた。風もないし、積もりそうな気配もないから、暗くなる前に家に帰りつければ影響はなさそうだ。
「あ。お父さん」
「ん?」
「お父さんにもあげる。好きでしょ? これ」
そう言って息子がくれたのは、りっちゃんにもあげていたのと同じ包み。マシュマロだ。
「好きだけど……お父さんが貰っていいのか? 律君には……」
「律にはマカロンあげたもん。それは最初からお父さんにあげようと思って買ったの」
「そうだったのか……ありがとう、真白」
天使だな。可愛い我が子を抱きしめてやりたい衝動に耐えながら、俺は早速袋を開け、マシュマロを一つ口に含んだ。
ふんわりした食感を歯で切ると、中からは別の甘みが広がってくる。
「お父さん。そのマシュマロ、中にチョコが入ってるんだって」
「ん……確かに。チョコクリームが入ってる」
「おいしい?」
「おいしいよ。真白も食べる?」
「……1個だけ」
小さな手のひらにマシュマロを乗せる。
白いお菓子を口に放り投げた息子は、案の定眉を顰めた。
「おいしくなかったか?」
「……甘い……」
「この甘さがいいのに」
あっという間に溶けてなくなってしまうほど繊細なこの甘さが、俺は大好きだ。
雪の中、伸びてきた手を、そっと繋ぐ。寒さの香る冬の道も、今日は長く感じなかった。
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