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「お父さん。次はおもちゃ屋さん行こ」
「おお、行こう行こう」
愛しい手に、くいくいと引っ張られながら、俺はエスカレーターへ向かう。
ショッピングモールへ到着してから、およそ二時間。律君へのプレゼントはとっくに決まったものの、俺達はまだ建物の中をあちこち彷徨っていた。
というのも、息子がプレゼントを渡したい相手は、実はもう一人いるらしいのだ。そっちがなかなか決まらなかった。
お菓子。タオル。カレンダー。マグカップ。それなりにオシャレで無難そうなものを見つけては俺が「これは?」と提案しても、息子は首を横に振る。
「白いのじゃなきゃだめ」
それで一蹴だ。色だけハッキリ決めてるってことは、きっと白が好きな子なんだろう。
七階のおもちゃ売り場に着くと、息子は俺の手をすり抜けて、とことこ歩き出した。
天使か。屋内でもまだフードを被ったままの可愛い背中。あれ激写したいな。そんなことしたら、妻には「家庭内盗撮キモイ」と言われるだろうけど。
「……っあの子、かわいいっ」
息子とすれ違った男の子が、興奮気味にそう叫んだ。震えるほど見開かれた瞳が、もう手遅れだと告げている。
ああ、またか。俺は内心ため息をついた。
目鼻立ちがはっきりしている息子は妻にそっくりだ。そのせいで、よく女の子に間違えられては男の子の心ばかり撃ち抜いてしまう。今みたく。
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