ましゅまろ

4/12
前へ
/12ページ
次へ
+++++++ 「お父さん。次はおもちゃ屋さん行こ」 「おお、行こう行こう」  愛しい手に、くいくいと引っ張られながら、俺はエスカレーターへ向かう。  ショッピングモールへ到着してから、およそ二時間。律君へのプレゼントはとっくに決まったものの、俺達はまだ建物の中をあちこち彷徨(さまよ)っていた。  というのも、息子がプレゼントを渡したい相手は、実はもう一人いるらしいのだ。そっちがなかなか決まらなかった。  お菓子。タオル。カレンダー。マグカップ。それなりにオシャレで無難そうなものを見つけては俺が「これは?」と提案しても、息子は首を横に振る。 「白いのじゃなきゃだめ」  それで一蹴だ。色だけハッキリ決めてるってことは、きっと白が好きな子なんだろう。  七階のおもちゃ売り場に着くと、息子は俺の手をすり抜けて、とことこ歩き出した。  天使か。屋内でもまだフードを被ったままの可愛い背中。あれ激写したいな。そんなことしたら、妻には「家庭内盗撮キモイ」と言われるだろうけど。 「……っあの子、かわいいっ」  息子とすれ違った男の子が、興奮気味にそう叫んだ。震えるほど見開かれた瞳が、もう手遅れだと告げている。  ああ、またか。俺は内心ため息をついた。  目鼻立ちがはっきりしている息子は妻にそっくりだ。そのせいで、よく女の子に間違えられては男の子の心ばかり撃ち抜いてしまう。今みたく。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加