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ブブ国の片田舎、小河沿いの牧草地にて。
大音量で鳴く牛たちの傍ら、黒い長衣を着た異形が2つ佇む。
1つは長身の人骨、もう1つは全身が金属鎧。
鎧から麗しい声が聞こえる。この異形は女性だろう。
電卓は、彼女から勝負を挑まれた。
大きく跳ねて挑戦に応える。
この時、電卓は数多の状況再現を既に終え、全通りで勝っていた。
しかし空中、筐体が彼女の両手で掴まれる。
現実と再現の差に、電卓は驚愕した。
「信じられない。私の負けです」
もう1つの骨の異形が、紳士的に話しかけてきた。
「あなたは強い。所持品も基礎能力も、技術も素晴らしい」
「しかし自分が見えていない」
電卓は納得した。それしかあり得ない。
この異形らは自己を修め、それが勝敗を分けた。
自己の解明が目的の電卓にとって、彼らは興味深い。
「自己とは何ですか?」
「機械くん、その問いは難しい」
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