1章・電卓 1

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1章・電卓 1

電卓は異世界へ転生した。 温暖な丘陵(きゅうりょう)地帯にて。 背の低い草原、点在する木と岩、歴史を思わせる石垣。 電卓は湖面に映る自分を見た。 自分についての謎や関心が尽きなくなり、思いを巡らせる。 手持ちの論理と誤謬(ごびゅう)では、何が問題かさえ分からない。 しばらくは、自己の解明が目的になるだろう。 同地帯の片田舎にて。 異形な地元民との交流で、古き良き技術を見せられた。 彼らはてこを働かせ、石を持ち上げた。 1本のロープを駆使し、結び目を動滑車にして引きを変えた。 この異世界にも電気はあるだろうか。 電卓は前の世界を思い出す。 あの人類は未熟な自己へ陥り、文明は倒錯と悲惨を追った。 この文明がそうでない事を願った。 地元民は最後に、自国「ブブ」について語った。 ブブ国は異形が暮らす国で、不殺(ふさつ)の儀礼的戦闘を日常とする。 この片田舎でも、戦闘はあり得る。
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