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「凄いことになってましたね」
日に日に増す暴動への対処。
一市民として彼らの気持ちは理解できるが、けが人や大きな事故が起きないよう、彼らを出来るだけ波風立てずに収めるのが役目だ。
それに中たるこの世界の警察組織である『サイバーポリス』その隊員であるコウタたちは、会社に詰め寄る抗議団体をどうにか今日の所は済ませて貰ったところ。
「しかし、以前にもAIの一斉放棄による暴動を鎮めたかと思えば、今度は現実世界の暴動。勘弁してくほしいね」
座席に寄りかかりながら面倒臭そうに呟くレイトの言う『AI暴動事件』から半年、アカシック社の前社長である『月原ソウ』は謎の失踪を始め、後任は『皆月 セイ』と言うスタイルの良い金髪の女社長だ。
ちょうどカーナビのテレビに映っており、記者会見が行われている。
「社長は、AIRによって人間の仕事が徐々に追われつつあることに関してどうお考えですか!?」
「その件に関しましては……」
もっとも喋らせるのは他の重役ばかりで皆月自体はまともに取り合うつもりすらなさそうだ。
「結構な美人さんっすけど……絶対性格悪そうっすよね」
吊り上がった目つきからは、残酷そうな冷たいイメージがついて回り、エイナも思わず呟いてしまう。
「それよりも、彼女の経営。かなり雑と言うか大雑把と言うか。AIRを無料で配布するなんて何を考えているんだか」
当然、AIテクノロジーの一端を担うアカシック社の株の暴落も尋常でなかったが、そこで講じたのがAIRの無料配布。
絶対に暴走しないと言う会社の信頼回復のための配布であると言う。
確かに、それで人類はまた大きな発展を繰り広げてきた。
だがその進化に追いつける者ばかりでなかった。
「それも本当かどうか怪しくなってきたよ」
「この分じゃ明日もまた抗議起きるね」
とレイトが楽観的かつ面倒臭そうに呟くのをコウタは窘める。
「怪我人は出ていないがいずれ何が起きても不思議ではない。気を抜くな!」
一連の暴動鎮圧の件で一躍昇進し、現場へと赴く行動隊長となったことで、よりその熱血具合を増したコウタに、レイトは二つ返事で返しつつ背を向けた時にはベッと下を出していた。
「しかし。こんな事、いつまで続ける気かな……あぁ、ハイハイ。仕事します」
また気抜けたこと言ったかなとコウタに睨まれたレイトは適当な顔しながらも慌てて取り繕うが、どうやら違うようだ。
「エイナ。引き継ぎをたのむ!」
パトカーの扉を開け、いきなりどこかへと行ってしまう。
向かう先は人気のない裏手の通りだ。
今から追えばすぐに見つかると、思っていたがその結果は空振り。
「いない……」
『どうしたんですか、急に』
彼のケータイから入る女の子の声。
世間には知られていない今のAIの原型に当たる高性能型AI『アダム』が分割し、紆余曲折あって今はコウタのパートナーとなっている楽しみの感情を司る『ブルーバード』だ。
「あいつだ……闇月がいた」
閑散とした路地。
今でも目に焼き付いているあの姿。
『え!?』
コウタの言う闇月とは、見た目は可愛らしい少女であるが、それとは裏腹に、人を人とも思わぬ残虐性と残酷性を秘めている。
その為に、前副隊長は降格を余儀なくされ、隊員も犠牲になってきた。
「あいつめ。急に社長に就任したり、今度は何をする気だ」
それを思えばコウタも、自然と身に力が入りつつあった。
闇月は自分の肉体を見た目がもっと幼い少女に可変させられる、人智を超えた存在であり、また一人ではない。
ところ変わってアカシック社の一般的には知られていない地下数百m下。
広く殺風景なコンクリート作りの部屋で、集められたのは数百は超えようかという数の同じ顔、同じ背丈。同じ服装。同じ髪型の少女たち。
彼女らはまるで造られたクローンのように生き写しの存在が、キッチリと一部の乱れもなくなんの疑問も抱くことはなく整列していた。
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