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その上にある小さな小窓から覗ける小さな灯り。ちょっとしたホテルの個室ほどもある豪華な部屋で、暖炉の床が回転式に裏返り中はエレベーターとなって、中から皆月セイと同じスーツであるが、ダボダボで今にも脱げ落ちそうな服を着た闇月が入室する。
「闇月様。おかえりなさいませ」
彼女を待ち受けるは、メイド服姿で従事し、表の彼女等と同じ背丈や顔つきをしているが髪をカールにまとめ、大人しげな印象を与える少女であった。
闇月はゴキッと言う音を鳴らし、まだ右腕が残ったままだったと、腕を縮めながら下着姿のまま、スーツを彼女に押し付ける。
「蓮月(はづき)表の様子は?」
「耐久テスト、頭脳テスト共に良好。いつでも出られます」
クローゼットから、いつもと同じ純白の男物スーツに着替え、髪を後ろに投げて長い髪をふんだんに強調する。
「そう。例の新兵器の様子は?」
「まだ調整は必要ですが、この辺りで一度実践テストのデータも取れればと」
「なら順調ってことね」
それだけ聞けて満足したか、闇月はクロステーブルの上に山で置かれていたポテトチップスの袋を手に取り、乱雑に開けながら表の疲れを癒やすように座って食べ始める。
「本当、世間というのはいつも口だけは大きいものね」
疲れを知らない身体を持つ彼女であるが面倒臭いという感情はあるようだ。
ストレスを癒やすように、脇目も振るうことなく何枚か重ねて頬張った。
短時間で高いカロリーと塩分を取れる最適な菓子だと、その一点を闇月は褒めている。
「しかし。いかがなさいますか? このままでは我が社の沽券にも」
蓮月は彼女の傍へ紅茶を一つ置き、まだ淹れたてでハッキリと湯気の見える熱い状態だろうにも関わらず、闇月は冷水でも飲むみたく、一口で傾け飲み干した。
「好きにさせて置けばいい」
次の一袋を開け、また頬張り続ける。
「人間がAIを管理してるからそう言うことになるのよ」
「これからはAIがしっかりと人間を管理してやらないと行けないわ、ね」
また一口、歯でかじる音が静かに地下室で鳴るのだった。
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