第2話 その2

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「それより、来週末も京都らしいからよろしくねー」  靖成は皿を洗って、濡れた手を雑に振って水気を飛ばし、和室にかけてある狩衣を指差した。 「あれ、なんで?仕事?」 「うーん。わかんないけど今日手紙が来てさあ。出先だったから誤魔化すの大変だったよ。全く佐々木さんは空気が読めないんだよなあ……」 靖成は通勤鞄から、「京都→東京、靖成行」と尾翼に筆で書かれた紙飛行機を取り出す。 開くとそこには、今週末の日にちと時間、駅からほど近い、結婚式もできるようなホテルの名前、それから「キレイなスーツで来るように。ユキちゃん宜しくv( ̄ー ̄)v」と書いてある。 「靖成、これさ……」 ユキは、真剣な顔で紙を凝視している。ただ事ではないかと靖成もユキの手元にある紙を覗きこんだが、ユキはそのまま靖成のほうを向いた。 「見合いじゃね?」 「へ?」 普段は縁の無い単語に、靖成はいつも以上の間抜け面になる。見合い?なんで?誰?ユキちゃんが?と子供の質問みたいに矢継ぎ早に言う靖成に「俺が見合いしてどうすんだよ」とユキは一蹴した。 「……見合いか。相手は普通の人なのかな」 「ユキちゃん、俺、平安時代の女よりは現代っぽい顔の方が好みなんだよねえ……」 「ちげーよ。陰陽師関連かどうかってことだよ。さっちゃんみたいに霊感が皆無の人とだいたい結婚してるからさ、皆」  さっちゃんとは、靖成の母の聡子のことである。 「あー……」 なになに、と靖成が再度聞くと、ユキは、スーツかあ、と頭をかかえた。 「今着てるので良いんじゃないの」 「だめ!見た目だいじ!第一印象大事!」 えー、と面倒くさそうに言う靖成を見もせず、ユキはあー、とかうん?とかひとしきり考えたあと、ぽんと膝を打った。
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