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コントラスト
生と死の狭間を越えるとき、ひとはなにかを見るのだろうか。人智を超えたものが降りてきて、天地の理を鮮やかに知ることがあるのだろうか。
それとも、入眠の瞬間を認識できないように、知らぬ間に死の領域に溶けていくのだろうか。
死の世界は、どのようなものなのだろう。なにもない“無”だろうか、それとも意識が存在する“有”なのだろうか。
耳を澄ませば聞こえてきた音は失せ、地に落としていた影は消え去り、静寂は不在だけを伝えてくる。
指先に触れるもののない空虚な広がりは、そこにあったはずの温もりを、過去の哀しい記憶に変える。
生と死は、存在と無、壱と零にくっきりと分けられるのだろうか。
それとも一連の事象として、連綿と続いてゆくものなのだろうか。
その静と動のコントラストは圧倒的に胸に迫るけれど、それでもきっと、視界に映るものと、目を凝らしても見えないものが、世界にはあるはずだ。
愛していると、伝えてくれないか。
ずっと愛していたと、誰か伝えてくれないか。
風よ雲よ空よ、私が悪かったと、伝えてくれないか。
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