コントラスト

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コントラスト

 生と死の狭間を越えるとき、ひとはなにかを見るのだろうか。人智を超えたものが降りてきて、天地の(ことわり)を鮮やかに知ることがあるのだろうか。  それとも、入眠の瞬間を認識できないように、知らぬ()に死の領域に溶けていくのだろうか。  死の世界は、どのようなものなのだろう。なにもない“無”だろうか、それとも意識が存在する“有”なのだろうか。 72ac971f-ea8f-423c-8ff6-18bce0e6663d  耳を澄ませば聞こえてきた音は()せ、地に落としていた影は消え去り、静寂は不在だけを伝えてくる。  指先に()れるもののない空虚(くうきょ)な広がりは、そこにあったはずの(ぬく)もりを、過去の哀しい記憶に変える。  生と死は、存在と無、(いち)(ぜろ)にくっきりと分けられるのだろうか。  それとも一連の事象として、連綿(れんめん)と続いてゆくものなのだろうか。  その静と動のコントラストは圧倒的に胸に迫るけれど、それでもきっと、視界に映るものと、目を()らしても見えないものが、世界にはあるはずだ。  愛していると、伝えてくれないか。  ずっと愛していたと、誰か伝えてくれないか。  風よ雲よ空よ、私が悪かったと、伝えてくれないか。
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