しろいゆきをあびる

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しろいゆきをあびる

健全な精神を持つあなたが 灰になればそれは美しい白でしょう 燃えた骨などは海辺の貝殻のようにはかなく、たよりなく、しかしかなしいくらいに無色透明が宿る そんな美しいものを、ぢめんの下のおけらやみみずにくれてやるなど私はたえられない 健全な精神は宙を舞うべきだと思う あなたはいとおしいけど、わたしのものではないから、天の光がさす、この晴れやかな庭を空気と共にただよえばいい あなたは自由になる 世間から、生から、死から、存在から、不安から、私から、あなたから、 あなたはやさしい幸福になって旅をする もしよろしければ、ほんとうによろしければでいいのだが、すこし気が向いたときに、私の元に、そそと帰ってきてはくれないか あなたがいないと、少々さみしくなってしまう あたためてくれとは言わないよ せめて私の上に、真白な雪を降らしてはくれないか その健全な精神で私を冷たく濡らしてはくれないか 私はそれを、勝手に待つ しばらくしたら、私もあなたと雪になりたい
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