透明な血液

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透明な血液

あなたの心臓には透明な血液が流れる なぜ神は感情をきれいな雫で落とすことにしたのだろうか そんなことを問うより先に、あなたの涙を見ればそれは明らかだ ほんとうに申し訳ない こんな私と道を共にしたばかりに あなたはそんな顔をしなければならないのでしょう 我々は正しい愛を知らない 傷つけるばかりの、小さなけもののお遊びしか知らない それがほんとうにはずかしくてたまらなくなる みんなの前で青い炎に燃やされたわたくしのからだは、皮膚が爛(ただ)れ、些細な刺激に神経をすり減らし、虫が這うような痒みに耐えきれず だから人と関わることなど考えられず それなのにあなたの透明な血液が、嗄(しわが)れたこのこころに、なぜ流れる 私があげられるものなど、何もありはせず この二本の腕は失うものなど持ってはおらず それなのになぜあなたは、失ったら怖いものを、この腕に託したのだろうか 私は怖くてたまらないのに、触れてしまったから元には戻れない 私はそれを、ゆっくりと、一滴も残らず、飲み干した
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