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「えっ? でも前田さんが……」
「咲良〜。お前はあまり知らない女と俺の話どっち信じるんだ?」
「賢二」
「だろ? 前田の意図はよくわからないが、何か担がれたとかじゃない? そもそも俺好きな奴いるし」
「……そう、なんだ」
「誰とか聞かないんだ?」
なだめるように背中をぽんぽんと叩かれて、身体が溶けそうだ。賢二が女子に気安くスキンシップをとるタイプではないと知っている。だとしたら、もしかして……?
さっきまでどん底だったのに、今はぎゅうんと気持ちが急上昇する。ジェットコースターのように、高低差がひどくて心臓がもたない。
バクバクバクと鳴る音、見つめられる視線。すべてが夢みたいで現実味もないのに、伝わってくる熱が、この近さが、夢じゃないと教えてくる。
「聞いても、いいの?」
「聞けよ。それに俺が怒ってるってわかってる?」
「それは、……ライン無視したから」
「やっぱり無視かよ。他には?」
「先に帰ったから」
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