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「あれもなかなか衝撃的だったな……」
一晩経っても鮮明に浮かぶ光景。そのあと、賢二とその彼女が二人で歩いているのを見て、ああ、失恋したんだと実感した。
それから気づけばもう家に帰ってきていて、夜、ふと向かいの賢二の部屋に電気がついているのを見て泣けてきた。
「彼女ができたら、この関係も変わるんだよね」
牽制されるまでもなく、好きだからこそカップルの姿なんて見たくもないから、こっちから距離あけるってばっ!! と、ささくれた気持ちで思う。
でも、あの後あいつは普通にラインしてきた。
『咲良、なんで先に帰るんだ』
それは彼女を作ったあんたのせいだしっ!! 気を使ったのになんで文句言われないといけないのか。
というのは建前で、あんな精神状態で賢二に会うのが怖かった。
そもそも何事も動じないと言われ落ち着き過ぎる賢二は、こちらが10仕掛けたことに1返ってくるような人だ。
そのくせ、咲良がしんどかったりするとすぐ気付く。咲良自身が気づいていないことでも、賢二はそういう時には聡く行動力を発揮するのだ。今まではそれが特別な気がして嬉しかった。
だけど、そんなことで喜んではもうダメなのだ。少なくとも、咲良が賢二に恋心を抱いているあいだは……。
賢二の特別が別にできてしまったことがショックだった。何より、自分が何もしないままそうなってしまったことに後悔が止まらない。後悔しかない。
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