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母が何も疑問を持たずに賢二を通す。こんなところにも、幼馴染みの弊害が現れる。
「来るなって言ったのにぃぃ」
ベッドに潜り込み文句を言う。今から着替える時間もないから、パジャマ姿や、泣きはらして腫れぼったい目を少しでも隠そうと思ってだ。
ノックもせずに、カチャリとドアが開く。
「おい、咲良。俺行くって言ったのに、ベッドに入っているとはいい度胸だな」
「私は来ないでって言ったし」
「もう来たから遅い。ベッドから出てこいよ」
「嫌だ」
「はぁぁ。何? 昨日は勝手に帰るし、今はこんなんだし」
「別に。疲れてるっていったよね?」
「そんなの俺に通じると思ってるのか? しんどかったら昨日の時点で俺は気付く。帰るまでは普通だったからな」
ほんと、ずるい。
朴念仁のくせに、こうして咲良のことを見てると言われて、恋する乙女が揺るがないと思っているのか。
こいつには彼女、こいつには彼女。と心の中で呪文のように繰り返し、ぎゅっと掛け布団を握りしめる。
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