ちかすぎて

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 顔は見えないが、明らかに不機嫌な声で咎められ、咲良の心はさらにささくれだつ。  こっちが聞きたいわ。なんで、急に彼女なんて作るのだ!!  予兆なんてなかった。だから、告白する暇さえなかった。 時間はたっぷりあったけど、近くにいるからこそいろいろ見えて、夢のために頑張っている賢二の邪魔をしたくなかった。  それは言い訳かもしれない。でも、純粋な思いでもあった。 だけど一番の本音は、近くにいるからこそ壊れるものが怖かったのだと思う。幼馴染み(特別)扱いしてくれているから、それが壊れるくらいならまだいいかと思って先延ばしにしていた。  大事に思う気持ちは本当で、それはとても純粋でさっき見た景色のように白いはずなのに、次から次へと足跡をつけられ濁っていく。  咲良の気持ちはぐちゃぐちゃだ。 幼馴染みとしては気持ちよく祝福してあげたいのにできない。彼女ができてもこうして気にかけてくれる賢二が眩しすぎて、胸が、目が、痛くて見ていられない。 「咲良、何か言え」 「賢二に話すことはない」 「はあ? 俺は話したいからここに来てる。そんなことするなら知らないからな」  怒ったように賢二が言う。大抵のことは気にしないのに、今日は咲良の態度も悪いせいか機嫌が悪い。
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