ちかすぎて

8/18

94人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
 喧嘩したいわけじゃないのに……。知らないなんて、よっぽど怒らせたか呆れさせたようだ。  これは、幼馴染みとしても終わってしまうのだろうか。彼女ができたからって、全てを終わらせたかったわけではなくて、傷心の自分に少し時間が欲しかっただけなのに。  咲良はぽろぽろと涙を流した。もう、怖くて苦しくて賢二の顔なんて見れない。  賢二の動く気配がする。びんびんにアンテナを張り、動きを感じ取ろうとする自分がもう嫌だ。  忘れたいのに忘れさせてくれない。優しくしてほしくないのに、優しくされたい。不器用でまっすぐな優しさ。そういうの、自分だけ知っていればいいなんておごっていたのかも知れない。  もう、自分だけのものではなくなった。  引き止めたいのに、何もできない。涙が出てなにも言えない。その言い訳さえ思いつかないまま引き止めたら、完全に気持ちがバレる。 それだけはダメだ。それこそこの関係が徹底的に崩れてしまう。  今は耐えて、落ち着いたら謝ろう。ぐすっと咲良は鼻をすすり、もう早く部屋を出て行ってくれと願いさらに潜り込んだ。  すると、賢二が掛け布団を掴むと、ぐいっと引っぺがしてきた。 「えっ? ちょっ、横暴!!」 「ほら、泣いてる。咲良はなんで嘘をつくのかな?」
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

94人が本棚に入れています
本棚に追加