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喧嘩したいわけじゃないのに……。知らないなんて、よっぽど怒らせたか呆れさせたようだ。
これは、幼馴染みとしても終わってしまうのだろうか。彼女ができたからって、全てを終わらせたかったわけではなくて、傷心の自分に少し時間が欲しかっただけなのに。
咲良はぽろぽろと涙を流した。もう、怖くて苦しくて賢二の顔なんて見れない。
賢二の動く気配がする。びんびんにアンテナを張り、動きを感じ取ろうとする自分がもう嫌だ。
忘れたいのに忘れさせてくれない。優しくしてほしくないのに、優しくされたい。不器用でまっすぐな優しさ。そういうの、自分だけ知っていればいいなんておごっていたのかも知れない。
もう、自分だけのものではなくなった。
引き止めたいのに、何もできない。涙が出てなにも言えない。その言い訳さえ思いつかないまま引き止めたら、完全に気持ちがバレる。
それだけはダメだ。それこそこの関係が徹底的に崩れてしまう。
今は耐えて、落ち着いたら謝ろう。ぐすっと咲良は鼻をすすり、もう早く部屋を出て行ってくれと願いさらに潜り込んだ。
すると、賢二が掛け布団を掴むと、ぐいっと引っぺがしてきた。
「えっ? ちょっ、横暴!!」
「ほら、泣いてる。咲良はなんで嘘をつくのかな?」
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