ちかすぎて

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「…………」 「あっ、そう。無視するんだ? ならいい。俺も自由にさせてもらうから」  そう言った賢二が布団に潜り込んできて、掛け布団を掛け直した。冷気とともに入り込んできた賢二の息遣いが耳元で聞こえる。咲良は今上を見ているが、少しでも横を向けばガッツリご対面になる近さだ。 「…………えっ? 何してるの?」  カチンコチンに固まりながらあわあわと声を出す咲良と違って、賢二はむすぅっとしながらも平然と答えた。 「咲良がどうしても潜りたいみたいだから、俺も入る。さっきので身体冷えたしな」 「知らないし。家に帰って暖まりなよ」 「あいにく、話は終わってないから」 「はぁぁ? こっちにはないって。本当、放っておいて欲しい」 「だって、お前、泣いてるだろ? しかも、俺が関係してるっぽいし」  そこに気付いたのなら、なおさら放っておいて欲しい。今は賢二の優しさが痛すぎる。 「関係ないって言った」 「態度がそう言ってないし。ああ〜、寒。お前、あったかいな」
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