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「あっ、朝だ」
寝起きのかすれた声で、いつもより眩しく感じて目を細めながら咲良はぽそっとつぶやいた。
「もしかして」
シャッとカーテンを引くと、目の前に白い世界が広がっていた。いつもよりも部屋が明るく感じるのは、外に雪が降り積もっているからのようだ。
昨夜、しくしく泣いた咲良の目には痛い。
目が覚めたら真っ白な世界。まるでの今の頭と一緒だ。
「ああ、目に染みる」
この白さは目に痛い。せめて雨だったら、今の全てを流してくれるんだなんて感傷的になりながらちょっぴり浸れるのに。
なんだよ、雪って。傷心でしんどくて嫉妬も混じったこの気持ちには痛いよ。全てを反射するほどの白さ。その輝きを見ているのはしんどすぎた。
昨日、咲良は失恋した。幼馴染みの賢二に彼女ができたと知ったからだ。
本人から聞いたわけではない。彼女と名乗る女性がわざわざやってきたのだ。
「賢二くん、私と付き合うから。幼馴染みだからって今までみたいにべったりしないでね」
ときたもんだ。
小さな頃ならまだしも、年頃になってからべったりしたことはないのに牽制されてしまった。
現実味もなく間抜けにもぽかんと口を開けたまま何も言い返さない咲良を見て、ふんと一瞥し彼女は去っていった。
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