唄声

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唄声

あなたが嫌いだった ことば遣いが耳触りで 磁石のS極とS極が反発し合うように 同じフレーズ(ことば)を使うあなたをこころが跳ね返していた わたしはわたしだけでいいの あなたはあなただけでいいの 同じカラーは打ち消し合って どちらかが消えるから あなたが唄えばうたうほど わたしはこころをかきむしり拒み続けた 木漏れ日のように囁くその声に 溶かされないようにと抗い わたしのことばを打ち消さないで わたしの存在を打ち消さないでと あなたの声にこころを閉ざし あたたかい声でわたしを撫でないで 琴線をくすぐらないでと拒み続けた  唄わないで “耳触りのいい声”で 気が付くとこころの 分厚いころもを脱がされ わたしはあなたの唄を口ずさんでいた これは“負け”? じゃない わたしはあなたの声に堕ちたの あのフレーズ(ことば)はムカつくけど それを唄う声に惚れたの 唄声に罪はないわ だからこれは敗北じゃない
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