ある冬の出来事

1/8
前へ
/8ページ
次へ
「品川!!」 廊下に出ると見慣れた背中を見つけ、声をかける。 声に気がつき、その背中はゆっくりと振り向いた。 「なに。」 その人が見せたのは、なんともまあ不愛想な顔。 「今日の練習、お休みだって。他の部と場所取りバッティングしちゃったらしいよ。」 私は負けずに、努めて明るくふるまう。 「そう。わかった。」 その努力もむなしく、会話は10秒で終了。 というか、これは会話とは言わない。連絡事項の伝達。 相手は向きを元に戻し、私からどんどん離れていく。 ・・・はぁ。 吐く息が白くなる季節。とびきり大きくため息をついたのはもちろん私。 最近、品川が冷たい。 これが私の目下の悩みである。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加