二節 深奥に眠るもの 起

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二節 深奥に眠るもの 起

 次なる調査の支度を整えたシエルたちは、北へと向かった。目指すはアークセプトから北北西に広がる山林地帯――その片隅に隠れるように存在する、とある集落跡だ。  ノルフォーレ街道を進む旅路は順調だったが、いくつかの宿場町を通り過ぎる中で、シエルたちは各地の現状も垣間見た。やはりと言うべきか、聖都襲撃を端とした混乱は未だ広がりつつあるようで、どこの町も緊張の渦巻く重い空気に包まれていた。  不安そうな人々の姿には居た堪れない思いも込み上げたが、しかし今のシエルたちに寄り道する余裕はなかった。今の自分たちが果たすべき目的の為に――そして一刻も早く事態を解決する為にも、シエルたちは歯痒さを堪えて歩みを続けた。
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