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連載第2回、「炸裂」
2016年、3月22日 取材初日。
記録されている一番古いビデオカメラの映像は、急な雑音と共に始まる。
自分の足元を映し出し、歩くと同時に吐き気を催す程に画面が揺れる。
実を言えばスタジオに到着したばかりのこの時、当日の撮影許可はまだ取れていなかった。そればかりか、緊張のあまりカメラの電源がオンになっている事にすら気づいていない有様だった。衝撃に強く、バッテリー持ちの良い、業務用ハイビジョンのデジタルビデオカメラ。一般的な家庭用ホームビデオよりも大きいとは言え、扱い慣れていると無意識にオンオフを切り替えている事もある…というのは、下手すぎる言い訳にすぎないのだが。
前を歩く男の大きな背中に続いて、初めてスタジオに足を踏み入れる。
ぎゅっと、息苦しくなったのを覚えている。圧迫感に体が縮こまり、緊張が頂点に達する。バンドメンバーに会う為スタジオを訪れる事は仕事柄日常茶飯事だが、この時ばかりは気持ちの入りようが違ったように思う。画面には今入って来たばかりの入り口のドアが逆さ向けに映し出され、音声だけが私の緊張感とスタジオの空気を拾っている。
「ええっと。で、こないだオリエが話してた出版社のライターさん。ああー…」
この日から始まる『ドーンハンマー』との苛烈な日々の第一声は、世界最高峰のデスメタルボーカリスト、池脇竜二の言葉だった。
-- ああ、あの初めまして、よろしくお願いします。詩音社から参りました、雑誌編集部の時枝です。
この時すでに、私をこのスタジオまで案内して来た池脇と、他に男性が2名私の前に居るのだが、まだ画面には映し出されていない。相変わらず揺れの激しいカメラのレンズはスタジオの壁を彷徨った挙句、入り口のドアを映して揺れたままだ。
「前に言ってた、うちのアクマの取材だそうだ」
と言ったのは件の池脇だ。
-- え?
「へー、道理で」
この時声を発したのがベーシストの神波大成だ。(『道理で』という言葉の意味は、彼らと旧知の間柄である弊社編集部の人間ではなく、一回りも年の若い女が現れた理由をこの時初めて察したから、ということらしかった)
-- アクマ?
相手はデスラッシュの雄、ドーンハンマーの池脇竜二だ。正直、アクマと言われて真っ先に浮かんだのは「悪魔崇拝」だった。世界にはそういったテーマで活動するメタルバンドもたくさんいる。そこに関する事柄を取材しに来たと誤解されているのかと、本気でそう思った。
その時だった。
スタジオのドアが開いて一人の女性が入ってきた。白いハーフパンツに、黒のメタリカTシャツ。オールバックで纏めたブラウンの髪を後ろでぎゅっと縛っている。まだこの時髪の色は、赤みがかった茶色だった。一年前から今も変わらず世界最強、爆音駄天使の登場である。しかしもちろん、画面上は逆さまだ。
-- あ、初めまして、詩音社の…。
「え、もう撮ってるの?」
彼女の視線と右手の指先がレンズに向けられた。
-- へ? あ!
ブツ、と映像が途切れる。
情けない程、痛恨の凡ミスだった。慌てて電源を落としてから再度電源を入れるまでに10分以上謝り倒した。個人情報がいとも簡単に流出してしまう昨今、盗撮の嫌疑をかけられたとあっては、業務上の信用問題というより人として致命傷だと大いに焦った。最初の説明で十分誤解は解け、彼女も別に責めたわけではないと言ってくれたのだが、私が自分を許せず無駄に時間を費やしてしまい、さらに猛省。今日はもう引き上げて、別の日に改めて伺いますと半泣きで申し出た記憶が微かに残っている。しかしその言葉に被せるように、
「しつこいな」
と言って苦笑した彼女の笑顔を撮れなかったことが、今はとても悔しい。
映像再開。
鉄筋コンクリートのだだっ広いスタジオである。4人が本番さながらに並んで演奏できる、小さなライブハウス程の空間に、楽器セットやアンプ、スピーカー、モニター類、様々な機械設備と配線等が整然と並べられている。そこから少し離れた正面に2人掛けのソファと4人掛けのソファーがコの字に並び、その中央には幅2メートルはあろうかというデカさのテーブルが鎮座している。この楽器セットの前に置かれた場違いなテーブルとソファを彼らが『応接セット』と呼んでいた事から、今後私もその呼称を使わせていただく。私が最初に入って来たスタジオ入口の反対側にも別のドアがあり、その先はPAブースへと繋がっている。
最初に落ち着いてこのスタジオを観察した時に抱いた感想は、「日本で活動するメタルバンドにしてはお金持ってるなあ」だった。いわゆる練習スタジオなのだが、ここは彼らの自社ビル内であり、スタジオのある階に関してはワンフロアぶち抜き設計の為とにもかくも広い、という印象だ。余談だが、別の階にはシャワールームもそれぞれの楽屋もあるそうだ。
私の入って来たドアもデッドスペースを隔てた二枚構造になっており、防音という意味ではかなりしっかりとした作りだ。初めてこのスタジオ内で演奏を聞いた時は、心臓が潰れて死ぬような思いをしたのもまた懐かしい記憶である。
壁際に三脚を立ててカメラをセットする。画面の右側に私が入って来たスタジオ入口があり、左側がPAブースだ。この目線に立った時、スタジオ中央にある応接セットを挟んだ向こう側に、丁度彼らが演奏するスペースがある。
この位置にカメラをセットすると、練習風景も雑談風景も同じアングルで撮影が出来て非常に効率が良い。
その4人掛けソファーの左側に一人で座っている、長い黒髪の男性。365日サングラスをかけているが、稀に外した素顔を見せてくれた時のはっとした瞬間が癖になる、このバンドの音を根底から支えるグループの背骨とも言うべきベーシスト、彼が神波大成である。
対して彼の正面、テーブルを挟んだ画面右側のソファーに座る革ジャン姿の男性こそ、世界が欲しがる「ギフト」の持ち主であり、現代最巧ギタリストの一人として数え上げられる、伊澄翔太郎だ。
そしてカメラ正面、応接セットを挟んで向こう側に立ち、マイクスタンドの高さ調節をしている落ち着かない様子の男性。世界と勝負出来る理由は彼の声量にあり、と言っても過言ではない。彼こそが大気を蹂躙する歌うたい、池脇竜二である。
…そして。
伊澄の座るソファーの後ろに立って髪の毛をポニーテールに括り直している女性。世界中のメタルキッズが呆気に取られて立ち尽くし、その直後に熱狂で打ち震えることとなる超絶技巧派・超絶パワーヒッタードラマー、芥川繭子その人である。
-- 悪魔というのは、ニックネームですか?
「アクマ? 誰が」
-- え?
「え、私ですか? 初めて言われた。アクタガワ、マユコ、アク、マ? うわ!」
「おい、どうでも良い話はその辺にしてくれよ。普通にそこに立ててっけどカメラ回すのは何の為だ?こいつの取材なんだろ。それとも俺らも取材対象なのか? 今日オリエに会ってないから分からないけど、もしかして知らないの俺だけ?」
私と繭子のやりとりに割って入って来たのは、伊澄翔太郎である。彼が普段どおり話をする声を聞いたのはこの時が初めてだったが、心底震えあがったのを今でもはっきりと覚えている。一瞬で、私と繭子の空気に緊張が漲る。
-- あのー、ですね。一応御社の代表の方にはこれこれこういう趣旨です、というお話は何度か事前にさせて頂いておりまして。
「さあ、聞いてないな」
と伊澄。
「俺は聞いたけど」
と池脇。
「俺も聞いた」
と神波。
ちなみに何度か名前の出ている「オリエ」というのが、何を隠そうバンドのマネージャーであり、彼らが所属する事務所の代表であり、そして神波大成の奥方でもある、伊藤織江氏だ。
「お前はなんて聞いてんだ?」
伊澄が振り返らずに聞く。それだけで繭子の背筋がシャンとする。
「えーっと、なんて聞いてたかな。あ、密着ー、ですね。いや、カメラ入れるとか、何を撮るとかー…は、聞いてないか、えー、すいません忘れました」
カタコトで答える繭子。
今見てもやはり可愛い。しかし当時は援護射撃をしてもらえない事に少々苛立ちを覚えた。確かにバンドマンにはルーズな面もある。だがそういった事とは別に、私は初っ端で躓いたし、そしてミスを重ねてしまったのだ。
-- すみません、手違いがあったかもしれません。改めて説明させてください。今回うちの雑誌で長期連載を始動させるにあたってですね、あなた方のバンドを通して、日本のメタル界の現状と、世界のスラッシュメタルバンドの実情を映し出すという試みでですね。(しどろもどろの必死の説明に男達は沈黙。繭子は天井を見たり腕を掻いたり、聞いているのかいないのか分からない)…一応ですね、名刺代わりと申しますか、先日行われた台湾でのライブレポートと、そこにいたるまでのバンドの経歴などを私なりに編纂して提出させて頂きました。そちらを確認していただいた上で、今回の企画の趣旨をご理解いただいて、伊藤様には既にご了解をいただけているものと思い込んでおりました。改めまして、私が今回企画したのは…(この後もしばらく私の長ったらしい説明が続く)
突然、伊澄が裏返った声を発する。
「い、一年!? 今一年って言ったか?」
-- はい。今日から一年をかけて、来年開催されるワールドツアー、ドーンハンマー初のヘッドライナーツアーまでを記録します。
「え? バンドを?」
-- はい。
「繭子じゃなくて?」と畳みかける伊澄。
-- 芥川さんを通した視点で、バンドを撮りたいと考えています。
「撮りたいって何だ。映像がメインなのか?」
-- インタビュー取材がメインです。カメラ映像はその資料と思っていただければ。
「よく通ったなそんな企画。誰が見たいんだ」
-- うちの雑誌を定期で購入してるファンはもとより、昨年からバンドの知名度がグンと上がって来てるのは間違いないので、行けます。行けると思って私が企画して、編集長と意見を戦わせて今ここにいます。…いますが、そのことで今、皆さんにお伝えしなければならない事があります。それは、この企画は私が私の為に、やりたくてやりたくて押し切った企画であるが故に、その…雑誌に掲載されるかはまだ未定の状態なんです。
「ん?」
と繭子が首を傾げた。
-- 一年かけて取材します。記録として映像も残します。しかし一年後、形になるかどうかは、その後の編集作業および映像内容を検討したのち、編集部全体の意見を纏めた上で決定します。ですので、極端な話ボツになる可能性があります。
「そんな事ある?」
と繭子が鼻で笑う。
「平たく言えばその時に俺らの人気が今より落ちてればナシって事だろ」
という伊澄の指摘に、繭子は合点がいったという顔で頷き、また笑った。
池脇が落ち着いたトーンで言う。
「別にそれは全然かまわないけど、どういう事がしたいんだ?」
私は弾かれたように顔を上げて、メンバーの顔を見据えた。正直に言えばこの時、面食らっていた。それは全然かまわない、という台詞が返って来るなど予想駄にしていなかったのだ。この件を伝えるに当たっては、いったいどれ程の暴言を吐かれるか、まで覚悟していたくらいである。彼らの貴重な時間を拝借した上で、その上で形にならないかもしれないと宣言するのだから吐かれて当然なのだ。私は俄然鼻息荒く、勢いに乗った。
-- 取材後、ある程度私が流れと物語の枠を創ります。長期間カメラを回す事になるとどうしても日常風景になってしまう恐れがあるので、このバンドの歴史と魅力、パーソナルな部分も含めた実態を描きながら、来年のライブに向けて走り続けるあなた方の生き様を順序立てて構成します。雑誌には月イチ連載で膨大なインタビュー記事と、バンドの記録としてDVDを付録でつける予定です。
「お、おい」
伊澄が手をあげて制する。「待てよ。それだとせっかくツアーの一年前から取材しても、連載が始まるのはそれが終わってからだろ。ライブが終わってから、一年前の俺らを連載しますっつったって全然旬じゃないよな。そんな記事誰が読みたいんだよ」
これぞまさに、伊澄翔太郎の頭の良さが窺い知れる反応である。出会った初日からこの通りだが、この男の人間的な面白さは今もって天井知らずだ。
-- ご指摘の通り、本当はもっと前から取材を開始して、連載が終る頃に来年のライブが間近に迫るっていう展開が理想だろうな、と私も考えてはいました。しかしやはり、今で良いと思います。これは私があなた方の活動、主に海外でのライブの手応えや向こうのバンドの反応を見聞きして思った事ですが、おそらく、来年のヘッドライナーが終わった段階でバンドはとんでもない状態になっていると思います。その時点で、今決定している事よりももっとすごい事が、起こるはずだと思っています。そう言った意味で、バンドのこの一年を振り返るという連載内容は全然ありだと判断しました。…直感に拠る所が、大きいですけど。
「ふーん、そうなってると良いけどな」
他人事のようにそう言う伊澄に、「なります!」と息巻く私。
「なんで私なんですか?」
この時の冷やかな繭子の声と顔は、今思い出しても震えが来る。あまりの冷たい口調に、私はも咄嗟には言葉を返せなかった。とても頭の回転が速い人なのだとすぐに理解できた伊澄とのテンポの良い会話により、ある程度こちらの趣旨を汲み取って、受け入れられ始めたと感じた矢先だった。だからこそ余計に怖かった。繭子は私を見ずに、前に座る伊澄の肩辺りを見つめながら続ける。
「私の視点を通すってなんですか。それこそ織江さんからは何も聞いてないですね。もし聞いてたら嫌ですって答えてるはずなんで」
そこへ池脇が助け舟を出してくれる。
「あー、なんだ。それは俺聞いてたけど、特にへんなアレは感じなかったぞ」
「嫌です。私の視点とか、私の気持ちとかを入れて欲しくないです」
-- あの、ただそれだど、私目線になってしまって全然バンドに寄り添えないので、少なくともメンバーの肩の上にカメラが乗ってるくらいの距離感じゃないと…。
「だからなんで私を選んだんですか?女だからですよね。私が女で、ドーンハンマーっていうゴリゴリのメタルバンドでドラム叩いてるっていう意外性を面白可笑しく捉えたいんですよね?」
刺さるような目で、繭子が私を見つめる。睨むというより、見つめるが正しい。この時初めて、きちんと目を見て言葉を交わしたと記憶しているが、正直怖すぎて、映像を見返すまではっきりと思い出せないでいた。
-- …違います。
「嫌でーす。どうしてもっていうならバンマスである竜二さんでお願いします」
-- それは。
「翔太郎さんだって嫌ですよね。翔太郎さんの個人的な才能とかフューチャーされて色眼鏡で見られるの嫌でしょ?きっと嫌なはず、絶対そう」
「ふふ。うん、嫌だ」
「でしょ?ほら」
「お前らなぁ」
困ったもんだと池脇が溜息をついたその時だった。
目の前の空気がバシ!っと音を立てたように聞こえた。
「私が女だってのは偶然だけど!私がこのバンドでドラム叩いてるのは偶然なんかじゃない!」
炸裂した。
空気と、音と、人の気持ちがいきなり眼前で炸裂した。スタジオが静まりかえる。私は本当に馬鹿だった。足がガクガクと震えていたにも関わらず、なんて美しい女性なのだろうと、繭子を見ながらそんな事を思っていた。誰かが大きく鼻から息を吸い込み、大きく吐き出す音。誰も何も言えなかった。その通りだと誰もが思っていたし、誠意をもって説明したい私の気持ちが完全に委縮してしまった。私はまだ知らなかったのだ。芥川繭子がこのバンドにかける思い、その強さについて、何も分かっていなかったのだ。
-- 謝ります。ごめんなさい。ただ芥川さんが女だから面白いと思ったわけではありません。そもそも私は音源を聞いた時、あなたが女性だと知りませんでした。ただ確かに、この企画を推し進めようと目論んだ理由としては、あなたが女性である事も切っ掛けの一つではありますし、そういう意味では色眼鏡で見ていると言われても仕方がないのかもしれません。ただ分かってほしいのは、アナタだけを特別視したいわけではなくて、なんというのか、芥川さんの目線で見ることで、より深くバンドの絆や魅力の理由などを知れると思ったし、その根拠を聞かれると自分でも分からないのですがミーハーな気持ちがゼロかと言えば嘘になります。しかし私も女なので池脇さん達の目線で撮っても共鳴できるかどうかの自信もなくて、それなら男のライターが来て密着した方がそれらしい絵が撮れると思うんですよね、私も女なのでドラマーが女性でこんな可愛い人だと知った時になんというか、こんな事があっていいのか、こんな音を出す超絶格好いいバンドのドラマーが女性でしかも超可愛くて今まさに世界で勝負しようって時に彼らに密着しないで誰を取材するんだっていうのがグルグル頭にあって、じゃあどうやってそれを形にするかと言われたら映像として彼らの背中を追い回したいし、ただ追い回した所でスタッフ?ファン?何?誰目線なんだこの絵はって疑問に持たれるしそれなら衝撃を受けた芥川さんとより近い目線で彼ら全体を見ることで彼女の魅力もそうだしバンドの持つ世界観や強さ、ひいては日常的な…
「うっせえなあー!」
そう叫んだ伊澄の顔は完全に笑っていた。
「わかったわかった、もういいから泣くなよ、面倒臭いから」
そういう池脇も困った顔をしながら、やはり笑っている。
「なんだお前。結局デレついてんじゃねえか」
という伊澄の言葉に、繭子はだらしなく、
「えへへ」
と言った。
-- は、あ、あの、取材、受けていただけますか?
「いいよ。分かったよ。繭子いいな?」
観念したように池脇は答え、繭子に念を押す。
「はい(苦笑したまま頷く)」
「所でにこの企画には名前とかついてんのか?『ドーンハンマー密着365日、衝撃の24時!』みたいな」
池脇が少しでも話を進めようと興味なさげにそう言うと、
「ダッサ」
と神波が肩を揺すって笑った。
-- 一応私が考えた仮の名前ならあります。
「どんな?」
と池脇。
-- 『 世界はそのバンドを、 KING OF IRONSPIRIT と呼んだ 』。
だっせええええ!
衝撃的な音割れ。
衝撃的な笑い声。
衝撃的な、彼らの魅力。
…と、彼らとの「衝撃的な」出会いをそのまま文字に起こしてみたが、いかがだっただろうか。この企画を本格的に始動するにあたっては、メンバーの意見を最も重要視した。何度も話をした。私が狼狽し、ついには泣き出してしまう場面などは敢えて収録しなくて良いのではないか、という優しい提案もあったが、初めからそんなつもりは毛頭無かった。私は彼らから多くの事を引き出させて頂いた。その私が、自分の恥だけ覆い隠すのは全く筋が通っていないと思うからだ。それに私が涙を流して訴えかけたのはこの日が初めてだが、泣いたこと自体、全くもって最後というわけではない。正直に言えば、編集して無かったことにしようにも、私は彼らの前で泣き過ぎたのだ。
この企画に着けた冠。
なぜ「DAWN HAMMNER のすべて」ではなく「芥川繭子という理由」というタイトルなのかも、弾幕のような拙い言い訳と気持ちの悪い私の妄想と本音で、少しはお分かりいただけたのではないだろうか。だがもちろん、ただそれだけを理由にこれ程ストレートな名前を付けたわけではない。今回の取材を振り返って改めて思う事は、芥川繭子でしかあり得なかった、ということなのだ。繭子自身が言うように、全ては、偶然ではなく必然だったのだ。
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