小5

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 夏休みが終わる直前に私は退院して彼と会わなくなった。だけど、頻繁に連絡を取り合っている。  誕生日にお母さんはスマホを買ってくれた。テレビ電話を入れてもらい、私達はテレビ電話で会話をした。 「来週遠足なんだ」 「どこ行くの?」 「金剛山」 「ふうん…」  わざと気のない返事をした。遠足に行ったことのない私が嫌味を言わなかったのは、これでも気を使うようになったからだ。初めて会った時、私が登山の動画を観てたのを彼は覚えてないのだろうか? 「俺の遠足の日、学校行ってる?」 「当たり前じゃん」 「昼休みとかさ、ちょっとだけでも電話出来るか?」 「無理だよ。学校にスマホ持って行けないし」 「そっか…」 「でも何で?」 「いや、登山の動画観てたろ?動画じゃなくてさ、テレビ電話で実況中継してやろうかと思ってさ…」  私の心臓がどきんと跳ねた。  彼はちゃんと覚えてた。登山の動画を観てたことも、私が自分でそこに行けないことも…。 「でも、あんたこそスマホ持ってないのに…」  彼には3つ上のお兄さんがいる。いつもお兄さんのスマホを借りて、テレビ電話で話している。お兄さんが使わない時にテレビ電話だけの使用を許してもらって、勝手に触ったら2度と貸してやらないときつく言われてるらしい。 「大丈夫!兄ちゃんも学校にスマホ持って行けないから、学校に行っている間は家に置いてあるんだ」 「だから、私も学校にスマホ持って行けないって」 「そっかー!いいアイデアだと思ったんだけどなー」  彼は心底残念そうな顔をして言った。私もすごく残念に思った。テレビ電話で彼にしてもらう実況中継は、とても楽しそうに思えたから。
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