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俺はシャンプーを大量に泡立てた。
「杏花、頭出して」
俺はそっと、そして恭しくシャンプーの泡を杏花の頭に載せた。
「目開けて鏡を見てごらん」
杏花はこわごわと目を開け鏡を見た。
「あ! あ〜! プリンセス!」
俺の力作、泡のティアラを見て杏花は大喜びだ。
そして狭い浴槽に杏花と2人で入った。杏花は俺の腕の中でご機嫌に歌を歌っている。
まだ何の抵抗も無く一緒に入ってくれる。頭も体も洗わせてくれる。考えてみればこんな事が出来るのはあとほんの数年だろう。そのうち一緒になんか入ってくれなくなるし洗濯だってパパのとは一緒にしないでって言い出すのだろう。
「パパ〜」じゃ無くて「オヤジ!」って呼び出すかも知れないし口もきいてくれなくなるかもしれない。
その時俺は何を思うのだろうか。
楽になって良かったと思うのだろうか。寂しいと思うのだろうか。
まあなってみなきゃ分からない。
その時まで、よろしくな。
我が愛娘よ。
〈終〉
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