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「ついてなさすぎる・・・」
さすがに、不幸には慣れっこの私だが、これは予想外だ。帰ってみると部屋の中がぐちゃぐちゃに荒らされていた。衣類が散乱し、部屋の引き出しは全て開いている。丁寧に炊飯器まで開いている。
「そんな事って・・・」
とにかく、警察に電話だ。えっと110番でよかったっけ?私は震える手で110番と携帯電話に打ち込んだ。すると「はい、警察です」という機械的な女性の声がした。
「あの、もしもし、えっと・・・」
私はパニックで、頭が真っ白になって言葉がでてこない。
「どうされました?」
「えっと、あ、空き巣でふ!」
思いっきり噛んだ。
「空き巣被害にあわれたのですね?」
電話の声はおかまいなく冷静にそう言った。
「はい、そのようです」
私は、恥ずかしさから少し落ち着きを取り戻した。
「では住所をお知らせください。すぐに警官が向かいます。部屋から出てお待ち下さい」
私は住所を知らせた。すると10分もしないうちに、サイレンを鳴らしたパトカーがやってきて、私は事の説明にあたった。
「私が帰ってきたらこのありさまで・・・」
「どうやら、鍵をこじ開けた形跡がありますね」
大きくえらの張った、神経質そうな若い警官が担当のようだ。
「何故私の部屋を?」私は聞いた。何故何万とある部屋の中から、普段できるだけ人に迷惑をかけずにひっそりと息を潜めて暮らしている私の部屋が空き巣に入られなきゃいけないのだ。
「どうでしょう。空き巣というのは、ほとんどが事前に下調べをするものですから、あなたの出勤時間などが、犯人に都合がよかったのでしょうね」
警官は同情する様子なく、無機質にそう言った。
やっぱり会社は休むべきだったのだ・・・。とんでもない事になってしまった。あれは虫のしらせだったのだ。
「盗られたものを、確認してください。通帳、印鑑、財布や、貴金属など」
「はい・・・」
私はぐちゃぐちゃになった自分の部屋の中に入り、貴重品の確認をおこなった。
「あの~」
「何か無くなっていたものはありましたか?」
警官は私に目を当てず、台帳に乗った用紙になにか書き込んでいる。
「全部無くなっています・・・」
「え?」
警官は書類から目を離し私を見た。
「金目の物、根こそぎ持っていかれています」
「根こそぎですか・・・」
警官に初めて同情の色が顔に浮かんだ。盗られたものは通帳、印鑑、貴金属、テレビ、ブルーレイレコーダー、DVD、という有様だった。
「容赦ないですね・・・」
私は笑うしかなかった。
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