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とはいえ自分の中には、こうした広々と見通しのよい景色を好む性質が含まれている事は確かなようだった。尤もそれは、閉塞的な都会の生活から開放された喜びなどではなく、一人酒によく合いそうな、そういうセンチメンタルな感情に近い。
ぼんやりと窓の外を見つめる自分へ、兄が時折チラチラと視線を送ってくる。記憶の中にいる私と、それより数年歳を重ねた今ここにいる私との差異を埋めようとしているかのような視線。
「そういえばこの間のボクシング、凄かったな。見たか?」
「ああ。タイトル戦のやつだろ?まさかあそこまで一方的な試合になるとはね」
ボクシングに野球。漫画や映画。私の趣味や嗜好は兄の模倣により形成されたと言っても過言ではない。勿論兄と離れている間に培われた部分もあるのだが、その根底には確実に兄の存在があった。
他人だろうが兄弟だろが趣味の話が盛り上がるのは変わりないもので、ボクシングの話を皮切りに、互いの口数は多くなっていった。それを別々の場所で暮らしていた二人の時間を埋めるため儀式のようだと思った。実家に到着した時、車の中の我々は、すっかりあの頃の俺達に戻っていたのだ。
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