仮面夫婦

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 私は、夫が嫌い。  でも、別れられない。世間体とか、子供のこととか、そんなことが理由で別れられない。  それに、ただ嫌いというだけで、夫には悪いところがない。私が悪いのだ。私が、いつの間にか夫を嫌いになっていた。  そのせいで、私は夫に辛くあたってしまう。  それなのに、あの人は、いつも変わらない。いつも優しい笑顔でいる。  けど、その変わらない笑みは、どこか感情を置いてきたような感じで――、私をさらに苛立たせる。  ある日、夫が、嫌な夢を見たと言った。  どう頑張っても、私(妻)が死んでしまう夢だったらしい。  花瓶が私の上に落下してきたり、それを回避しようと私を押しても、押した先で私が車にひかれたり……と、どう頑張っても、バッドエンドになってしまったらしい。  その話を聞いた私は、そんなに、私のことを思っていてくれたなんて、なんて夫は優しいのだと思った。  思ったが――、私は、ふと気づいてしまった。夫の心の奥は、私を殺したいほど憎んでいるのではないかということに。  それは、きっと、夫も気づかない深層心理。優しい夫は、その奥の心と、夢の中で戦っていたのだろう。  本当は、私を殺したいほど嫌いなのでしょう。  そう、聞いてしまいたかったけど、言えなかった。  怖かった。  内面に気づいた夫がどうなるか、わからず、怖かった。  だから、私は決めた。  私も、心を奥にしまい、笑顔で夫と生きていくと。  けど、怖い。いつか、奥の心が暴れてしまう日が来てしまうのではないかということに……。
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