第一章 散るならば春に

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「壬生、御堂の子供の担任、今年就任してきた。この者の周辺を洗え。これは、多分、入れ替わっている。過去を知る人物から、本当に同一人物なのかを確認しておけ」  壬生の資料は先程も読んだが、御堂には妻以外に不審な点はない。御堂の妻は失踪した事になっているが、地下社会のスパイであった。御堂は地下社会を監視しようとして、逆に監視されていた。  御堂の妻は、偽りの素性であったが御堂と結婚して子供を作った。その子供を通常社会に残して失踪していて、それには理由があったようだ。 「千手、御堂の妻は、坂之上の従姉妹なのか?」  俺が端末に話しかけると、資料が点滅していた。  御堂の妻の小百合は、今も地下社会に隠れて生きている。どうしてスパイに入っていたのか、理由ははっきりとしていないが、素性は分かってきた。  小百合の父親は、坂之上の弟で、若くして暗殺されていた。小百合の母も、若くして殺されていて、小百合は遠縁の家で育った。その遠縁の家は、小百合の存在を隠し、別人として育てていた。 「まあ、坂之上だからな……」  この坂之上というのは、地下社会の五大勢力の筆頭勢力になる。千手も頑張っているが、組織的には、千手の三倍以上の人数と資金力を持っている。
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