第十九章 時と共に死す 四

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 サトルの悲しみを知っていながら、市子が似た存在を作ってしまうというのも悲しい。 「しかし、あの狸親父……どこに市子を隠した……」  坂之上は、本宅の他に幾つもの家を所有していた。その他に、隠れ家もあるので、1まともに探していたら、あっという間に二週間が経過してしまいそうだ。急成長をしている胎児は、サトルが生まれた時のように、母体を殺しかねない。 「坂之上に事情を話すか……」 「多分、知っているだろう」  千手は映像を見ながら頬杖をつき、何か考え込んでいた。  坂之上は、市子の胎児が急成長する可能性を知っていて、産ませようとしているという。その理由は、やはり、この跡目合戦で、それで殺されるような子供ならば要らないのだ。
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