第一章 散るならば春に

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 相馬が席に座れと手で合図するので、俺が椅子に座ると、御堂も腰を下ろした。  相馬も機嫌が悪そうだが、御堂は更に機嫌が悪かった。 「お前をクビにしたいのは、山々だが……」  御堂の口調からすると、俺はまだクビに出来なかったらしい。  相馬は部下に人払いを頼むと、会議室をシークレット仕様にした。これは、公安でも重要な会議の場合に設定されるもので、この周辺の通信が全て遮断される。 「御堂警視監の妻だった女性から連絡がきて、地下社会で、派遣争いが激化する恐れがあると知らせてきた……」 「地下社会へは、公安でも手出しできませんよ」  相馬は頷くと、御堂をチラリと見た。 「それは知っている。だが、通常社会へ影響が出ている」  俺は、通常社会、裏社会、地下社会という三つの社会があるこの国で、通常社会で産まれたが地下社会で育った。幼馴染や仲間は、今も地下社会にいるので、状況は報告を受けて知っている。
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