第四章 散るならば春に 四

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 今度の梅干しも、輝くように美しいが、少し皺が多い。大きいので、小皿に乗せて端を齧ってみると、酸っぱいし塩辛かった。俺は、余りの酸っぱさに、足をばたつかせると、坂之上の胸を叩いた。 「酸っぱい!!!!」 「おいしいでしょう?」  俺がおおきく頷くと、坂之上が満足したように笑っていた。 「恐ろしいくらいに……可愛いですね。コレ……千手君もノックアウトのくちですね」 「俺は、最初から夏目に一目惚れしてから、ずっと、何度も一目惚れの片思いをしていますよ」  この姿で会って、殺されそうになった気もするが、それは置いておこう。 「俺も、子供を抱えて食事をしたかった……でも、忙しいうえに、常に命を狙われていて近寄れなかった」 「忙しいも、命の危険も言訳にしかならない……失くしてみると、よく分かる」
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