第一章 散るならば春に

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 このチップは、地下社会とは無関係の、小学校の女性教員の脳に埋め込まれていた。腹部や背中などに埋め込まれていたのならば、眠らされて埋め込まれたということも考えられるが、脳となると簡単にはできない。  女性教員は、脳にチップが埋め込まれている事を知らず、頭に怪我をした事も無いと言っていた。このチップは、女性教員が廊下で転び、頭を強打したために精密検査を受けた時に発見された。 「エステとか美容院でも出来ますよ……この型は古いものではないから、埋め込まれたのは一年以内。データの送信先を辿ってゆくと、見事に地下社会ですね……」  壬生が偽電波を流して追跡すると、地下社会に到着したが、誰と分かる前に消去されてしまった。これは、相手が情報戦に長けているという事を示している。 「まあ、坂之上の血筋ならば、事情は分かりますけどね……」 「だから、夏目。地下社会に行き、坂之上の状況を見張っていて欲しい。だが、ここからの通い、期間は一年でいい」  相馬は俺が、地下社会に常駐してしまうのも困るらしい。
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