第一章 散るならば春に

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「それと、西海も同行させる。我々は、夏目を地下社会に取られるのも困るのだ」  相馬としては、俺をもう地下社会に係わらせたくないらしい。その理由は、俺の脳の中に、世羅という天才の記憶があり、それが再生して生まれた世羅を抑制する鍵になっているからだった。 「分かりました」  御堂は苦々しく俺を睨んでいたが、もう一つチップを投げてきた。 「これは、犬に入っていたのですか?」  このチップは、周囲の音や映像を飛ばす、盗聴器&盗撮用の機械だが、やや大きいので人間には埋め込めない。 「そうだ、ウチの愛犬についていた」  これを仕込んだのは、御堂の妻であろう。でも、これは子供を見守る用途だった可能性が高い。 「御堂警視監、地下社会は悪の巣窟というわけではなく、この国に在っても、この国の管理下にないというだけです」 「分かっていても、許せないものはある」  御堂は、舌打ちすると相馬に頭を下げて、部屋を出て行った。
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