配信者:辻都はおこ

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 そんな配信者──辻都はおこは我が校にいると噂され、目星も付けられている。  それこそが、学校一の美少女、辻 琴葉である。  直接本人に尋ねた勇者もいるが、笑って誤魔化されたらしい。  噂となる主な理由は、顔が似ているからだそうだ。一部で名字の掠りも上がったが、この地域じゃ在り来りな名字ゆえ無効となった。  晴一も俺も辻だし、他にもまだいるし。  知ってどうする、と俺は思うが、ここの学生たちは違うらしい。あまりにも似た人物がいるから、突き止めたいと言った所だろうけど。  はおこは無口で、声さえ不明の少女だ。隠されたマフラーの下も含め、謎多き美少女の全貌を暴きたがる者は後を絶たなかった。 「マフラーの下、絶対可愛いって!」 「晴一、その話ばっかりだな」 「いやいや、コンプレックスあるかららしいけど絶対美女でしょ」  そう、晴一もその一人である。帰り道まで話題を引っ張るなんて、幾ら何でも熱中しすぎだろう。 「女の子にはね、見せられない部分があるんだよー」  振り向くと、例の人物、琴葉がいた。俺と晴一の間に自然と割り込んでくる。 「琴葉さん、何すかその口ぶり! はおこちゃんって、やっぱり琴葉さんですか!」 「だから違うってばー」  俺たち三人は仲がいい。晴一が琴葉を一目見て気に入り、声を掛けたのが最初だ。俺は必死で止めたが、奴は聞かなかった。  因みに、俺と琴葉は訳あって以前からの知り合いである。二人の関係は──秘密だ。 「じゃあマフラーして下さい! したら絶対同じですもん! てか、なんでいつもしないんですか!」 「嫌いなの。渡くんと一緒」  琴葉は何か言いたげに、俺へ目配せして来た。返答など用意しておらず、即興で作る。 「……首元モサモサしますもんね」  琴葉はマフラー嫌いで通っている。そして俺もだ。同盟組めば、なんて晴一に言われたこともある。  その代わり琴葉は、ぶかぶかで分厚いコートを着用し、防寒しているらしい。俺は逆で、中にたくさん着るスタイルである。 「顎が四角いからか!」 「うるせぇわ」  妙な流れでコンプレックスを指摘され、晴一を睨みつける。そんな空気を壊す為か、琴葉が笑声をあげた。 「晴一くん、顔なんか化粧でどうにでもなっちゃうのよ。だから可愛い子には注意ってね」 「うっ……可愛い人が言うと輝きが違う……」  あっさり流された晴一は、今日も琴葉に夢中だ。いや、はおこもだから可愛い子にか。なんて奴。 「あ、私この辺だから行くね」  駅が見えてきて、琴葉が並列から飛び出す。大きく手を振る姿は、それだけで目立った。周囲の目線を気にせず、振り返す晴一を横目で見る。 「琴葉さんまたー」  俺は他人の振りをし、二人から目を逸らしていた。
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