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第九章
長いようであっという間だった連休も終わり、久しぶりの登校に、少しだけわくわくする。
「佐奈。おはよう。髪の毛がまた明るくなっている気がするのだけれど……」
「おはよう知絵。よく気が付いたわね!ミルクティーベージュっていうのにしたのよ」
その高校生徒とは思えない風貌に、周りは見て見ぬふりだ。
「知絵は相変わらずね。あら?前髪また切った?」
「うっ。バレた?今朝慌てて切ったから、少し切りすぎちゃったの……」
今朝、眉毛程に切り揃えられた前髪を見た春斗に、日本人形みたいだと言われた。その言葉に、地味に傷ついている。
「大丈夫よ。サラサラストレートの、黒髪ロングヘアに、ぱっつん前髪の子なんて、この学校にあなたしかいないわ。それはすごい武器になると思うの」
「はあ。佐奈はいつも、私に恋をさせようと必死だけれど、たぶん無理だと思うわよ」
「諦めないで!知絵と恋バナをする日をずっと夢見ているんだから」
私の隣に、春斗以外の男の人がいるなんて考えられない。
こないだから、なんだか変だ。過去の私と、春斗を見てしまったからだろう。
一瞬だったけれど、春斗にそっくりな男の子に見つめられて、とてもドキドキしていたのを覚えている。
あんなに熱い眼差しで見つめられた千歳が、少し羨ましいなと思ってしまう。
あんな恋なら、してみたいな。
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