第九章

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「おはよう。知絵ちゃんと……ブロンドの佐奈ちゃん」 久しぶりに会う夏樹は、以前と何も変わらなくてホッとした。 「おはよう夏樹。これはブロンドじゃなくて、ミルクティーベージュよ」 どうしても、それは言いたいらしい。夏樹は、ぽかんとしている。 「知絵ちゃんは、なんだか随分若返ったね」 「さすが夏樹。女子の変化にすぐ気付く、イケてるメンズ代表」 「何それ…?夏樹、私はただ前髪を切り過ぎただけよ。もうこれ以上触れないで」 授業が始まる前に、休み中にあった出来事を一気に話す。 佐奈は休み中、隣町の親戚の家に行っていたらしい。近所に住むイケメンと連絡先を交換して、毎日メールをしていると、嬉しそうに語っていた。 チャイムが鳴っても、まだまだ話したりないようで、今から休み時間が待ち遠しそうだ。 「知絵ちゃんは、何をやっても可愛いよ」 席に着くなり、夏樹が唐突に言ってきた一言で、耳まで赤くなる。 「ど、どうしたの?」 「僕はいつもそう思っているよ」 真っ赤なトマト状態にされたまま、授業が始まる。 授業中、つい夏樹を見つめてしまう。どこから見ても整った顔をしているし、高校生とは思えない位紳士的だ。 夏樹に愛された子は、とても大切にされるんだろうな。 一六年間無縁だった、愛だの恋だのについて考えているなんて……私も少し大人になったのかしら。
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