第九章

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急に全く関係ない春斗の話題が出てきて、困惑する。 「そういうことだろう?春斗君といる為に君は、誰にも恋をしないし、誰も愛そうとしないんだ」 急に冷静さを失った夏樹に、肩を痛いほど掴まれる。 「ちょっと!言っている意味が分からないわ!離してよ!」 「嫌だね。そろそろ春斗君より僕を選んでよ」 「何を……」 「僕の気持ちが伝わっていないかな?どうしたらこの気持ちをわかってくれる?」 夏樹の気持ちは、恋愛をしたことがない私には、全くわからなかった。 「ごめん。夏樹……あなたの気持ちには応えられない」 私たちの周りに、今までにない緊張感が漂っている。 夏樹が怒っているのが肩から伝わってきて、逃げ出したくなる。 私を睨むように見下ろしている夏樹からは、愛情なんて感じられない。 パニックになりかけていた時、声がした、 「知絵!」 私を呼ぶ声と同時に、後ろから引っ張られて、心地よい温もりに包まれた。 ああ。やっぱり来てくれた。
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