39人が本棚に入れています
本棚に追加
/215ページ
ジリリリリ
「……んー……うるさい」
ジリリリリ
「あーもうっ!」
ガシャンッ
壊れるのではないかと心配になる程に、強く激しく、目覚まし時計を止める。
いや、もう壊れているのかもしれない。なぜなら既に起きる予定時刻を三十分も過ぎているのだから。
「え?なにこれ?完全に寝坊じゃない。……いいや、もう。人生諦めが肝心だわ」
「……すーすー」
あっという間に夢の中へ逆戻り。
どのくらい眠っていたのだろうか、急に息苦しくなり目を覚ます。
「……はあ。またか」
ほぼ毎日、今と同じような暑苦しさと息苦しさを感じながら目覚めるのだ。
「はーるーとー。暑いからそこどいてよ」
「あー……嫌だ」
「嫌って……」
先程から無駄に長い手足を私の体に絡みつけて、人の布団で眠ろうとしているこの男は私の血を分けた双子の兄で、名を春斗という。
れっきとした、正真正銘の、私の兄だ。
最初のコメントを投稿しよう!