第一章

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ジリリリリ 「……んー……うるさい」 ジリリリリ 「あーもうっ!」 ガシャンッ 壊れるのではないかと心配になる程に、強く激しく、目覚まし時計を止める。 いや、もう壊れているのかもしれない。なぜなら既に起きる予定時刻を三十分も過ぎているのだから。 「え?なにこれ?完全に寝坊じゃない。……いいや、もう。人生諦めが肝心だわ」 「……すーすー」 あっという間に夢の中へ逆戻り。 どのくらい眠っていたのだろうか、急に息苦しくなり目を覚ます。 「……はあ。またか」 ほぼ毎日、今と同じような暑苦しさと息苦しさを感じながら目覚めるのだ。  「はーるーとー。暑いからそこどいてよ」 「あー……嫌だ」 「嫌って……」 先程から無駄に長い手足を私の体に絡みつけて、人の布団で眠ろうとしているこの男は私の血を分けた双子の兄で、名を春斗という。 れっきとした、正真正銘の、私の兄だ。
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