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私たちは三歳になってすぐにこの町、仙人町にある神社の境内で見つけられたらしい。
運よく、直ぐに引き取り手が見つかったが、二人一緒にとまではいかなかった。
当初、私たちの祖母だという女性がすぐに現れ、二人共引き取ってくれるという話になったのだが、持病もあり一人を育てるので精一杯だった。
ここで、春斗と私は離れ離れとなったのだ。
私は、この町で長年占い業を営んでいるという橘家の一人息子、橘恭助に引き取られた。
恭君を初めて見た瞬間、幼い私は恋に落ちた。
今では顎程に伸び、ひとまとめにして縛っている真っ黒な髪の毛が、当時は耳程までしかなくサラサラで、長めの前髪が左目をほぼ隠してしまっていた。
本人曰く、大きな目のせいで、小さい頃よく女の子に間違えられたようで、コンプレックスになってしまったらしい。
けれども私は恭君の目が大好きで、特に左目の下にある泣き黒子がとてもセクシーでお気に入り。
年齢の割に、非常に落ち着いて見えたのは、華奢な体つきに羽織っている浴衣のせいだったのかもしれない。
当時、まだ若干二十一歳だった彼が、どうして私を育てることに決めたのかはいまだに謎だ。
私達の両親と恭君の両親に、親交があったということだけは、こそっと近所のおばさんに聞くことができた。
けれども私が恭君に引き取られた時には、既に恭君の両親は家にいなくて、その理由はいくら聞いても決して教えてはくれなかった。
高校卒業後直ぐに、占い師として働き始めた恭君は、同世代の人間とつるむこともなく、仕事一筋でここまできた。私を引き取った後は、より仕事に打ち込み、私を引き取り育てることに反対していた町の人々を、実力で納得させたらしい。
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