第一章

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今までじっと黙ってご飯を食べていた春斗が口を開けた。 「知絵は、こんなインチキ臭い奴がタイプなのか?」 なんとなく不機嫌な春斗。 恭君に対して冷たいのは、反抗期だからかしら。男の子って難しい。 「え?そうねえ……」 恭君との未来を本気で考えてみる。 私が恭君の奥さんかあ…… 毎朝起こしてくれて、食事も用意してくれる。 家事は完璧、収入もあり、見た目も良い。普段着が浴衣っていうところもポイント高いわよね。 大人の色気っていうのかしら。最近はより一層、そういうものが駄々洩れなんだもの。 「うん!ありよ。とてもあり。恭君が私の旦那さんなんて最高だわ。それに私達って、血は繋がっていないのだから結婚しても……」 「いや、やめとけ知絵。こういう何を考えているかわかんないような奴と結婚しても、絶対に幸せにはなれないから」 冷ややかな目で私を睨んでくる。 まあ、自分でも突拍子もない事を言ったと思っているけれどね。 そのやりとりを見ながら、ふっと余裕の笑みを浮かべている恭君。 「全く。近頃春斗君の口が悪すぎて困るよ。知絵ちゃんに悪影響だろう?もう少し大人にならないと嫌われちゃうよ」 春斗はチッと大きな舌打ちをして、箸をテーブルに叩きつけてどかどかと二階に上がっていってしまった。 「恭君、春斗って今反抗期?なんだか最近凄く機嫌が悪くない?」 「そうだねえ、この間少し意地悪をしちゃってね」 「え、何それ。知らないんだけど。一体何をしたの、恭君?」 「うーん、なんだったっけなあ」 絶対に覚えているのに、忘れた振りをしている。 こういうの昔から多いのよね。 「ふーん。じゃあ思い出したら教えてね。春斗がぷりぷりしていると居心地がわるいんだもの」 そう言って、春斗の分も食器を片付け、洗い物をする。休日の食器洗いは私が率先してやるようにしているのだ。
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