流れる光の先には…(ショートショート)

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 目が覚めると……白い光が流れていた。 「成功したんだ……」  ステラは目をうるませて、つぶやいた。  彼女は、若手の宇宙物理学博士なのだ。  スぺーススーツを着た彼女は、激しく流れる白い光の中にいた。 「違う違う! 私が流れてるのよ」  そーそー。まるで白いトンネルのような中を、彼女は流れていた。  それはタイムマシンの実験だったのだ。  科学者として若く優秀な彼女の自薦で、ステラは選ばれた。  そして彼女は、何処に向かっているのか? 「それは……未来……のハズ……」  正直に言って、分からなかった。 「もし、この先に何も無ければ、失敗。私も終わりだわ……」  やがて前方に見えてきたのは……地球?  そう、まぎれもなく地球だった。 「これが……未来の地球なら……大成功なのよ」  やがて、その白い光のトンネルを抜け……  その地球に降り立ってみると、どうも様子がおかしかった。  まったくの原野や山々がつづき、未来らしさは全く無かった。 「ここは……ひょっとして……」  向こうの方から、何かの鳴き声が聞こえてきた。  行ってみると、何人もの原始人がいたのだった。 「マズイ……失敗だわ……。  私は、22世紀に戻れない……。  だって計画では、未来のエネルギーを使って、私が装備しているシステム を稼動させ、22世紀に戻ることになっていたからよ……」  彼女は、大きな溜め息をつくと、近くの岩に座った。  空は、22世紀の空より美しかった。  しかし、彼女の心は暗く……目からは涙が流れた。 「これなら、いっそ死んだ方が……」
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