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冷蔵庫を開ける。 ハムや卵、瓶詰めに混ざって、しなびた母親の腕が入っている。 その手に握られた紙には、懐かしい筆跡でこう書かれていた。 「私達を忘れたの?」 その腕を乱暴に床に放り出すと、卵とハム、バターを取り出す。 薄汚れた調理台に向かうと、後ろから声が聞こえた。 「この裏切り者!」 友人の声だ。 ベイカーはリビングの隅にある古いテレビをつけ、音量を最大にした。 テレビではたわいもないニュース番組がやっている。 キャスターの声で無理矢理耳を埋めながら、フライパンにバターを敷いた。 「続いてのニュースです。ヨーロッパの小国……が内戦によって消滅してから、10年が経ちました。」
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