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確かに事件が起こってからそれほど時間が経っていないため、警察との遭遇が考えられる。僕もお世話になるのだけは避けたい(一応、怪しい行動をしている自覚はある)。
それは一ノ瀬くんも同じだろう。彼にも後ろめたいことがある。現に彼はコーヒーカップを見つめたまま考え込んでしまった。
「なら、こうしよう。僕は× × × 町の本屋に用があるんだ。散歩ついでに付き合ってくれよ」
「……いいだろう。散歩だけだよ」
とりあえず満足して頷くと、一ノ瀬くんはちらりと視線だけを僕に向けた。彼はよくこういう風に僕を見る。その視線を遮るようにパンケーキが置かれ、僕はとっさに新聞記事を片付けた。
「俺はお前が食べ終わるのを待つべきか?」
「もちろん」
もはや何も言わず、窓の外を見つめている彼の本性を知る人間はいるのだろうか。
――かつては、いたのだったな。
僕は甘い湯気を吸い込んで、少し食欲を感じたのであった。
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