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僕はカバンからファイルを取り出し、1枚の新聞記事をテーブルの上に置いた。 1人の女性が道端でカバンだけを残して消えてしまった事件に関する記事である。財布のみが抜き取られており、金銭を盗むことが目的であることは明らかだ。 しかし当の女性は見つからず、カバン周辺に彼女の痕跡は残っていなかった。ただそこにカバンが落ちていたのだ。唯一カバンに残された電車の定期のみが、女性が誰であるかを証明していた。 「俺もこれなら一昨日のニュースで見た。三島くんが気にする内容じゃないと思ったんだが」 一ノ瀬くんは少し意外そうな顔をした。 「これがただの失踪事件だと思っているなら、君もまだまだだね。これはただの強盗なんかじゃないさ!」 「少し声を落としてくれ……それで、彼女はもう殺されてるって言いたいのか」 僕は「もちろん」と頷く。
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