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あの、えっと、はい。
「…………大体、お話はわかりました」
「は、はい……」
突然訪ねてきた信幸くんのお母さん。かなり気まずい雰囲気のなかで着替えとかあれこれ準備を済ませて、リビングにあたる部屋のテーブルについてもらったけど、うぅ、なんか怖いよ。
「ていうか母さん、どうしたの? ていうか今日来るって言ってたっけ?」
「うーん、年末年始にはこっちに顔出してねって言ってたの、忘れちゃった?」
「あ、あぁ……あはは、ごめん」
「ふふふっ、怒ってないよ。信幸は昔から忘れっぽいから、たまにはお母さんが来てびっくりさせようかな、って思ってたんだけど……びっくりさせられちゃった」
「す、すみません……」
なんか居たたまれない……、僕帰った方がいいのかな? 信幸くんのお母さんはそんな僕を見てまた優しそうな笑顔を見せてくれたけど、うぅ、その笑顔、どういう笑顔ですか?
困っていたとき、信幸くんのお母さんが「あっ!」と声を出した。
「ねぇ、信幸! ここに来るときにコンビニ見たんだけど、ちょっとそこでお酒買ってきてくれない? お母さんたまにはちょっと飲みたくなっちゃった♪」
ええぇ、そ、そんなやけ酒するほど嫌だった……のかな……いや、嫌なのかな……息子を訪ねたら大きめのシャツ1枚だけ着た女が出てきたんだもんね、嫌だよね、そうだよね……。
親子水入らずにしてあげるのが、いい、よね……。
「あ、あの、ぼ……、あ、わたし、そろそろ、」
「えぇ~、まだいいじゃない寒いし! ね、信幸?」
もし僕に人のオーラみたいなものが見えたら、たぶん信幸くんのお母さんから凄まじい圧が放出されてるのを見たんだと思う。なんか……信幸くんの家族の力関係がわかる光景を見た気がして、そんな場じゃないけど、なんとなく微笑ましくなってしまった。
だけど、信幸くんが部屋から出てしまうと急に部屋の温度がすごく下がったような気がして。落ち着かない、どうしよう、何したらいいかな、何かしなきゃ……!
「芽衣さん」
「ぅわい!」
「……ふふ、もっとリラックスして? 勝手にお邪魔したのは私なんだから」
や、優しい気がするんだけど、恐縮するっていうか……と思っていたら、向い合わせで座っていたテーブルに突然お母さんが身を乗り出してきた!
「さっ! せっかく信幸も追っ払ったし、ガールズトークといきましょ!」
「え、あ、え?」
えぇ??
すっかり忘れていた年末年始、というか新年は、なんとも波乱っぽい幕開けを迎えたような気がしました、はい。
ていうか、えぇぇ??
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