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ガールズトーク。
えっ…………と…………。
率直に言って、頭のなかでは『どうしよう?』が頭のなかをぐるぐるして止まらない。
だって、裸ではなかったけどほとんど着てないようなものの服装で出会ってしまった信幸くんのお母さんと、なんだかんだふたりきりになってしまったのだ。
ニコニコしてくれてるけど、なんか……気になる、部屋くさくないかな?とか、なんか失礼なことしてないかな?とか、うぅ、気にしてたら変な汗かいてきた。汗臭いかな、嫌な気持ちにさせちゃってる?
あぁ、もうどうしよう、信幸くん早く戻ってきてよ……っ!
「……あの、芽衣さん?」
「ひゃっ、は、はいっ!」
「気まずそうね?」
「えっ、や、あ、そんなこと、ない……です、」
「ほんと~?」
クスクスと――けど決して嫌な感じのない――笑い声を漏らす信幸くんのお母さん。そのまま、いろいろ訊かれることになった。
「信幸のどういうところが好きなの?」
「えっ?」
「いろいろあるじゃない、顔が好きとか、性格とか……? うーん、これ自分の息子のことそうやっていうの抵抗あるなぁ、芽衣さんから聞きたいかな」
「ぅ、えっと、……ぜ、ん……、ぜんぶ……」
「ぜんぶ……って、全部?」
「ぁ……、あの、は、はい……」
「ふ~ん?」
「ちょっとした約束とかも覚えててくれるし、笑ったときにくしゃっ、て小さい子みたいになるのも可愛いし、僕のこと好きっていつも言ってくれるのも嬉しいし、人混みのなか歩くときに握ってくれる手もあったかいし、あと、声も優しくて耳ゾワゾワして……って、あっ、すいません、喋りすぎちゃいましたっ、」
「いいよいいよ~、うちの子のそういうの聞くの新鮮すぎてニヤけてただけだから。なんか、私も旦那と付き合ってるときそうだったなぁ……。
けど、そっかぁ、そういえば珍しくニコニコしながら外であったことを話してくれてるときあったけど、芽衣さんのおかげなんだ~」
「えっ、ぼ……、わたしの、ですか?」
「僕、でいいよ? さっき出てくる前もそうだったでしょ。芽衣さんっぽくて可愛いと思うし」
「え……、え、あの、は、はい……」
面と向かって褒められるのは、やっぱりあんまり得意じゃない。ていうか、この親子笑ったときの顔がほんとによすぎる……! お母さんの笑顔も信幸くんみたく朗らかで、見てるだけで心がぽかぽかしてくるっていうか、なんか、語彙力ほしいよ、ううぅ。
思わず顔を覆っていると、ふふっ、と笑い声。
つられて顔を上げると、お母さんがすごく優しい微笑みを浮かべて僕のことを見つめている。ぼーっと見つめ返していると、お母さんが今までとはちょっと違う口調で「芽衣さん」と僕を呼んだ。
「改まって言うと変な感じに思うかも知れないけど、本当に……ありがとう」
そう言う瞳が、少し濡れて見えた。
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