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郁実の淹れたアイスコーヒーを飲みながら、颯真は語って聞かせた。
「監督が、どうしてもラブシーンを入れようって言い出してね」
もともと、濡れ場は無しでOKしたはずの作品だ。
しかし相手役の俳優が、ひどくノッてきた。
「演技の成長が著しくってね。初めてカメラを回した時と今とでは、別人みたい」
「そうなんですか」
その迫真の演技に監督が、これは二人の間に何かなきゃ絶対おかしいだろ、と台本の書き換えを提案してきたのだ。
互いに命を預け合って逃避行する、パートナー。
激しいアクションの後に訪れる、つかの間の静寂。
「そこに、監督はエッチを放り込もう、って」
ぷぅ、と頬を膨らませる颯真だ。
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