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「長谷川さんは、来年僕と一緒にいることは嫌なのですか?」
「……」
「……そこで無言になると、僕は彼氏としてとても自信を失いそうです」
「待ってください。答えたいのですが、恥じらいが邪魔して言葉が出ないのです」
「恥じらうなら、まずはその敬語をやめてください。年上の彼女から敬語を使われると、冷めた夫婦関係を彷彿とさせて不安ですし、恥ずかしいです」
「敬語はやめられません。やめろと言われてやめられるほど、私は口達者な女ではありません」
コントのような会話が続きますが、これが僕達の日常なのです。
長谷川さんは一ヶ月前からずっとこの調子です。というより、付き合う前からずっとこの調子です。
長谷川さんは僕と一つしか歳が違わないのに、仏像のようにどっしりとしていて、歳に似合わない落ち着き方は、ソクラテスの再来とも思えるほどです。
「……長谷川さん、ちょっといいですか」
「はい。何ですか」
「年越し前にこんなことを言うのはどうかと思うけど、長谷川さんに言っておきたいことがあるのです」
年越しに備えて、長谷川さんは台所からカップ蕎麦を二つ分テーブルに持ってきました。そして、僕の話よりも優先だと言わんばかりに、カップ蕎麦にお湯を入れ始めます。
それが悔しかったですし、何よりさっきから話がつまらないため、僕は本当に話そうとしたことを一旦抑えて、ちょっと悪戯をすることにしました。
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