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年越しまで、あと5分になりました。年越し蕎麦はすっかり出来上がって、少し伸びつつありました。
「長谷川さん、泣かないでください。僕は嬉しいのです」
僕は、罪悪感に押し潰されて逃げ出したい気持ちでいっぱいでしたが、そんな中で、一つの思いが込み上げてきて、長谷川さんにぜひ伝えなくてはいけないと思いました。
「僕は、長谷川さんが僕と付き合ったことを後悔しているのかと思っていました。ですが、この日、長谷川さんの本当の気持ちを知ることができて、こんなに嬉しいことはありません。僕のためにここまで考えてくださって、ありがとうございます。やはり、僕は長谷川さんが好きです。大好きです」
「……うぅっ」
長谷川さんは、ぷるぷると震えていましたが、やがて僕の胸に飛び込んできました。
「私もです……好きです。あなたのことが、大好きです。どうしようもなく、好きなんです」
こんなに可愛い長谷川さんは見たことがありません。僕は、こんなに可愛い人が彼女になったことを、改めて幸せに思いました。
南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏。
覚悟はできました。いざ。
「……そして、一つ言わなくてはいけないことがあります」
僕は長谷川さんの両肩を掴んで、向かい合いました。
長谷川さんは、涙混じりの瞳で、僕の濁った瞳を見据えました。
「寿命の話は、嘘です。長谷川さんへの悪戯のつもりでした」
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